パソコンパーツを組み立てる
パソコンを自作するというのは、自分で必要なパーツを揃え組み立てることです。組み立てられたパソコンを、自作パソコンといいます。
自作するというよりは、パソコンパーツを組み立てるというほうが近いといえます。
自作パソコンというのは一定の利用者や規模があり、マーケットとして存在しています。またパソコンの構成やパソコンパーツの役割、現在のテクノロジーの状況などを理解する上では関連の深い領域のひとつです。
このページでは、自作パソコンとは何か?メリットやデメリット、関連する用語を交えて紹介しています。
段階
自作パソコンには、3つの段階があります。それは、準備、組み立て・OSとドライバのインストール、動作確認になります。
- 準備・・・構想、パーツを揃える
- 組み立て・・パーツの組み立て、OS・ドライバのインストール
- 動作確認・・アップデート、ソフトウェアのインストール
準備段階では、予算や求める性能の明確化から始まり、パーツを揃えることになります。他に予備知識を身に着けたり、多少の工具を準備することもあります。
組み立て段階では、各パソコンパーツの組み立て、OSインストール作業を行い、パソコンが起動し使用できるようにするまでの作業です。
最後の動作確認は、インターネット・メール設定、OSのアップデート、必要なソフトウェアのインストールなど行い、パソコンを実用的なレベルで使えるようにする作業です。この作業は、ある程度の動作確認を兼ねることができます。
また、パソコンの利用を開始してから 後で必要に応じてパソコンパーツを増設したり交換したりということもあります。
互換性
自作パソコンのパーツは、ATXやMicroATXといわれる規格に沿って製造されているため、一定の互換性が保たれています。そのため様々なパーツを組み合わせたり、交換したりということが概ね可能となっています。
また、CPUとマザーボードの組み合わせも、チップセットやCPUソケットによって制限が加わるため、マザーボードには取り付けができるCPU群は決まっています。
つまり、一見複雑に見える構成や組み立てというのも、ある程度の互換性やルールに基づいて行われているということです。
自作パソコンは、パーツの種類が多く、複雑な組み合わせが必要になるという印象もあるのですが、実際は使用する主要なパソコンパーツはほぼ決まっており、ある程度の互換性、ルールのもとで組み立てを行います。
パソコンパーツ
自作パソコンは複数のパソコンパーツで構成されており、それぞれのパソコンパーツも複数のメーカーによって提供されています。そのため、メーカーや型番など多様な組み合わせが可能です。
また新しい製品が出たら、新たにパソコンを自作したり、SSDやグラフィックボードなどパーツ単体で交換を行って使用することもできます。つまり、最新のテクノロジーを体験することができるということです。
自作パソコンでは、パソコンパーツをある程度 自分の意志で選択できる、自由度が高いということができるといえます。
ただ多様な組み合わせや自由度の高さというメリットがある反面、デメリットもあります。例えば、パーツそれぞれに保証期間などがあるため、一定期間は空き箱やレシートなどを保管しておくことがあり、単純に場所を取るということがあります。
また基本的な互換性があるとはいっても、パーツ間の相性問題が起きたり、しばしば例外的なことが起きることもあります。
IntelとAMD
パソコンパーツの中で中心的なものは、CPUとチップセットです。
CPUとチップセットは、IntelとAMDが提供しているため、いずれかのメーカーを選択することになります。チップセットはマザーボードに搭載されているので、Intel製のCPUであれば、Intel製のチップセットを搭載したマザーボード、AMD製のCPUであれば、AMD製のチップセットを搭載したマザーボードを使います。
それ以外のパーツ、例えば SSD、メモリー、電源などはIntel用、AMD用というのは基本的にはありません。
パソコンパーツは、CPUやマザーボードから選ぶことが多いため、まず CPUとチップセットをIntelかAMDかという選択になります。
全体的な傾向として AMDのCPUは内蔵グラフィックを搭載していないものが多く、この場合 グラフィックボードと組み合わせて使うことが前提となります。また動作周波数をあげて性能を向上させる オーバークロックに対応しているCPUが多いという傾向があります。
AMDのホームページを見ると分かりますが、ゲーマーやクリエーターという言葉がしばしば使われています。基本的にAMDは、マーケティングにおいてゲーマーやクリエーターなど性能を重視するユーザーを特に ターゲティングしているということができます。
ただこれはあくまで全体的な傾向であって、IntelのCPUでも内蔵グラフィックのないものやオーバークロック対応のものもあれば、AMDで内蔵グラフィックがあり オーバークロック非対応のものもあります。
IntelとAMD、このどちらにするかというのは、完全にユーザーの判断になります。
システム
パソコンはシステムであるということができます。システムとは、様々な要素が組み合わさって 全体としてひとつの機能をもつものです。
パソコンパーツの多くは単体では動作・機能させることができませんが、それぞれのパーツを連携させることで、情報の閲覧・取得、編集・作成、保存などの情報処理という機能をもたせることができます。
近年は特に情報量や作業量が増大している傾向にあります。
例えば、一眼レフカメラのRAWデータ、RAW現像、4K、ハイレゾ、写真、イラスト、動画の作成や編集、3Dに対応したCADソフト、ゲームなどがあります。
このような作業では、それぞれのパソコンパーツの性能を上げたり ボトルネックとなる部分をなくしたりして、作業を円滑にするように構築する必要も出てきます。
メーカー製パソコンでは、制約や限界が生じることがあります。
自作パソコンでは、HDDやSSDなどの記憶容量を増加させたり、グラフィックボードの取り付けや交換などでグラフィック機能を向上させたりすることができます。
拡張性
自作パソコンは拡張性が高いという特徴があります。
拡張性が高いというのは、グラフィックボードなどの拡張カード、ハードディスクなどのストレージを増設・追加できるということです。
ハードディスクを例にとるとメーカー製パソコンの場合、ほとんどの機種でHDDは1台までしか搭載されていません。あとから2台目のHDDを増設しようとしても、物理的にできない機種がほとんどです。
一方、自作PCの場合は、PCケースにもよりますがATX型のケースでは、2台目3台目のHDDの追加は、ほぼ標準でできるようになっています。
グラフィックボードやストレージの他に、サウンドカード、CPU、メモリーなど用途に応じて様々なデバイスを交換・増設できます。また液晶ディスプレイやスピーカー、マウス・キーボードなどの周辺機器も同様です。
拡張性が高い、スペックを上げることができるということになります。
ただ自作パソコンで一般的に使われているATX電源は、それなりにサイズがあるためPCケースなど筐体が、メーカー製パソコンに比べると大きくなるという傾向があります。またPCケースはエアフローを重視していることが多く、デザインも単調と感じる人もいるかもしれません。
ケースの大きさやデザインに関しては、デメリットになる可能性もあります。
ミドルタワーからやや拡張性を減らしてバランスをとるのが、ミニタワーになります。
自作パソコンでは、主流となっているのは ATXとMicroATXという規格ですが、小型の筐体・デザインを重視する場合は、他に Mini-ITX、ベアボーン、NUCなどもあります。
ただこのような小型化になるにつれて、汎用性の低い電源になったりすることもあり互換性・拡張性・メンテナンス性は低下していく傾向があります。
メンテナンス性
メーカー製パソコンの場合、PCケース、マザーボード、電源がほぼメーカー独自の規格で作られます。そのため数年後これらの部品が故障した場合、代替の部品を探すのがかなり困難になります。
メーカー製PCの電源やマザーボードがどこかのPCパーツ店で販売されているか?というとまず販売されていません。そのため修理する場合はメーカーに出すしか方法がないということになります。メーカー修理の場合、修理期間が長くかかり、保障に入っていなければ修理費用も高額になるという傾向があります。
一方、自作パソコンで使用されるパーツというのは、パソコンショップで購入することができます。
電源が壊れれば電源だけ交換したり、数年後PCケースを交換したければ交換することができます。つまり修理やカスタマイズが比較的容易にできるということと、安価にできるという特徴があります。
またハードディスクの交換・増設、SSDへの交換などもメーカーや専門の会社に頼まなくても多少の知識さえ身につければ、自分できるようになります。
順応的対応
自作パソコンのユーザーといっても、様々な人がいます。時期やきっかけ、関わり方も異なります。
自作パソコンを保有しているが、インターネット検索などライトユースの場合もあれば、動画などのマルチメディア作成、情報発信も積極的に行う人もいます。またメインのパソコンはメーカー製のノートパソコンで、自作パソコンはサーバー的な用途で使ったり、自然科学分野の統計や解析で自作パソコンを用いるということもあります。
このように、ひとくちに自作パソコンのユーザーといっても、そのスキルや関わり方というのはかなり多様であるということです。
そのため、久しぶりに自作パソコンを作ろうと思ったら、テクノロジーが進歩していて用語や機能が分からないということもあります。自作パソコンユーザーとはいえ、パソコンのことがすべて理解できているわけではないということです。
検索して調べたり雑誌で確認するということもあります。ある程度のことは、互換性によってサポートされたりして事なきを得ますが、パーツを組み立てれば必ずパソコンができる、安定して動作するという完全さをはじめから想定することはできません。
ある程度、何が起こるか分からないという不確実性を想定します。そして順応的に対応するということです。ひとことでいえば、情報を主体的に取得する、自分で考えるということなります。
しかしこの点に関しては、はじめは時間などのコストがかかるため、人によってはデメリットともいえます。はじめはできるだけリスクを減らし、確実な自作パソコンを使ってみたいということもあります。こうした場合は、組み立てキットやBTOパソコンという方法もあります。
先行者
マーケティング用語に、イノベーター理論という言葉があります。
イノベーター理論とは、ある商品が普及するまでの過程を消費者の行動によって捉えたものです。消費者をイノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティなど5つに分類しています。
イノベーターとは革新者という意味です。新しい製品を冒険的・積極的に採用する人たちです。自作ユーザーで例えると、OS、チップセット、CPU、SSDなど新技術・新製品をかなり早い段階で入手します。
性能の比較や検証 ベンチマークテスト、ECサイトのレビューなども積極的に行うことが多いようです。保有している自作パソコンは多いと考えられます。また自作パソコン関連のメディアや雑誌はここに該当するといえます。
アーリーアダプターは、初期採用者という意味です。新製品が出たら自ら情報を収集して検討を行います。イノベーターのレビューや情報を参考にします。イノベーターに比較すると得られる利益と費用、ベネフィットとコストのバランスを吟味します。
あるパソコンパーツが新たに発売されても、すべての自作ユーザーが購入するわけではありません。ほとんどのユーザーは見送ります。発売されたちょうどその時に、新たに自作する、利用しているパソコンの構成をカスタマイズする、修理するという需要があるユーザーが購入します。
パソコンパーツが出るたびに、様々な自作パソコンユーザーがその都度関わってきます。
自作パソコンはもともとが新技術・新製品を使えるという特徴があるため、概ねどのような時期においても、先行者が存在します。製品の比較、レビューなどが多く参考にしやすいという傾向があります。
(イノベーター理論:米国 社会学者 エベレット・ロジャーズの提唱)
基本と応用
自作パソコンでは、基本的なことと応用的なことに分けることができます。
基本的なことというのは、必須となるパソコンパーツの種類や役割、組み立ての一定の手順、SATAやPCI-Expressなどの基本的な用語です。
応用的なことというのは、理解していない、あるいは使用しなくても特に問題はないものです。例えば、CPUやメモリーの動作周波数をあげるオーバークロック、水冷、メモリーの拡張機能 XMP、Intel Optane Memory、複数のディスクを使うRAID、複数のグラフィックボードを使うSLIやCrossFireなどです。
このような応用的なことというのは、CPUやマザーボードが限定されていたり、自己責任を伴うことが多くなります。自作パソコンでは、さらに性能をあげたり機能をもたせる場合に、このような応用的なことがあるということになります。
テクノロジーは広範囲に渡っています。すべてを理解してそれを使用していくというよりも、まずは基本の部分を抑えて、その後必要に応じて応用的なことを行っていくというのがよいと考えられます。
スキーマ
メーカー製パソコンと自作パソコンでは、コンピューターの主要な構成部品はほとんど同じです。どちらも、電源・マザーボード・CPU・メモリー・ハードディスク・光学ドライブ・OSなどが組み合わさって動作しています。
例えば、メーカー製のデスクトップパソコンで使われるCPUと自作パソコンで使われるCPUというのは、同じデスクトップ版のCPUです。LGA1150という規格のものであれば、全く同じものが使われています。
またデスクトップ版のメモリーも、ともにDIMMであり規格が合えば 自作パソコンに取り付けができます。他にデスクトップ用の光学ドライブも、ともに5インチのものが使われています。
このようにメーカー製パソコンと自作パソコンでは、全体のパーツの構成や形状など共通しているところは多くなっています。つまり、自作パソコンを組み立てるということは、メーカー製パソコンでも適応される考え方や枠組み、スキーマを身に付けていることになります。
そのため、メーカー製パソコンのハードウェアの構成や仕組みなどの理解も進むと考えることができます。
リユース
メーカー製パソコンと自作パソコンでは、いくつか共通したパソコンパーツが使われています。そのため、一定規模の中古市場というものが形成されています。
特にCPU、メモリー、光学ドライブ、HDD、SSDなどは数が多く汎用性が高いため自作パソコンでも使うことができます。
低予算で組み立てたり、修理・増設で用いたりということができます。あるいは故障したパソコンから、まだ使えると思われる部品のみ取り出すこともあります。
はじめのうちは、このような中古品を使うということはあまり推奨されませんが、慣れてくると故障したパソコンでも、個別のハードウェアの部分にのみ着目して再利用、リユースできるようになってきます。
このようなことができるのも、ATXやMicroATXという統一された規格、チップセットとCPUの適合条件など互換性やルールがあるため可能となっています。
可用性
現在のパソコンパーツ、テクノロジーを活用すれば、極めて性能の高いパソコンを自作することができるでしょう。一般的な利用に関しては、ほぼ使いこなせないレベルに達しています。
省電力化、性能の向上、パーツによっては長期保証が付くものも多くなっており、可用性の高さに移行している感があります。可用性とは、必要な時に必要な情報処理を行うことができる、安定して使用できるという意味です。
すでに準備されているテクノロジー、可用性の高さを利用して何を行っていくか?巨人たちの肩に乗って何を実現していくか?これがポイントになってくるでしょう。
(巨人の肩に乗る:英国 物理学者 アイザック・ニュートンの言葉)